その金銭的効果を検証 ~マニュアル編~
これは、紙代と保管場所の削減に多大なる貢献をしたPDFの金銭的な効果についてまとめたものです。「長くなりそうだから、とりあえず印刷しとくか」と思ったあなた。別サイトにHTMLのページを用意しています。でも、ちょっと思い留まってください。電車の中で読むにしても、印刷するだけの価値があるかどうか、まずは斜め読みしてからにしませんか?
そんなあなたにブック形式を用意しました。ここをクリックして下さい。読み終わった後、「ああ、印刷しなくてよかった」と思うかもしれませんよ。それは、内容が黒犬の尻尾だから(オモシロクナイ)?
いえいえ、ブック形式で読むと、意外と早く読めて内容も把握しやすい、ということに気づくからです。
もちろんこのお話の主人公であるPDFのファイルも用意しました。必要な方はここをクリックして下さい。
ただ、「無駄な時間を使わせよって!」とお怒りの方もそうでない方も、これも一応著作物です。一部または全部のコピーや転用、転売等の行為はお止め下さい。
私は、2000年にRealRead Incという会社を創立しました。
そのころのインターネット上で表示されるコンテンツの殆どは、縦方向に無限に続く用紙上に横書きで書かれたものでした。「何とか通常のブラウザだけで、印刷物のようなページの概念をもった表現ができないか」というのが会社を作ったきっかけです。会社を興す動機なんてこんなもんなのですね。
その後、RealReadの技術だけなく、フラッシュなどの便利なツールも現れ、2008年になると、ページをめくる感覚でコンテンツが見られるサービスが随分と増えてきました。しかし、この技術を提供することができたのも、或いは多くの場面でブック形式を使われるようになったのも、PDFがあったからではないかと今更ながら思うのです。
PDFが出現するまでは、ドキュメントの殆どは、ワープロで作成されたにも拘わらず、印刷され、郵送され、保管され、紙と保管スペースを増やす一方でした。そういえば、ワープロが出た当初、デジタルにより紙を大幅に減らすことができる、と盛んに言われていたことを思い出します。勿論、そんなことはありませんでした。手で書くより格段に早く作成できるようなり、字も読みやすくなったお陰で、かえって書類の量は増えて行ったような気がします。
PDFは、本来印刷用データの効率的な伝達ツールとして開発され、当初は主に印刷業界で使われた技術です。しかし、最近ではドキュメントの公開や送付全般に使用されるようになり、紙代や保管スペースの節約といった経費節減に大きな役割を果たしています。むしろ、印刷用データの伝送用だと知っている人の方が少ないかもしれません。
さて、本題に入ります(やっと)。
まるで暗黙の了承であるかのように、ドキュメントを表示したり、提供したりする時に使われるようになったPDFですが、みなさんは、その効果を金銭的に考えたことがあるでしょうか?
通常、金銭的な効果が把握できないうちは、例え10円でも投資はしないものです。ここまで一般的に使われるようになったからには、きっとその効果があるからだと思うのです。
今更ながらという気がしないでもないのですが、敢えて今、その効果を金銭的に確認することで、私たちが提唱している「ブック形式」が使われ始めている理由もいっしょに考えてみたいと思ったのです。
普段はその存在すら忘れているけれど、なぜかいざという時に見当たらない大切なものが身の回りにはたくさんあります。あなたの奥方や、旦那のことではありませんよ。マニュアル、規定集、そして仕様書といった書類、冊子がそうですよね。
「いざという時に見当たらない」という経験は、必ずしも製品を購入した消費者や、火事・地震といった防災時に家人として経験するだけではありません。開発や販売を行い、利用者に対するサポートを行う供給者側の立場からでも同じことを経験します。
なぜ、見当たらないのでしょうか?
それは、これらの殆どが消費者側、提供側に関係なく「忘れ去られる」場所に保管されていたり、充分な数が配布されていないからです。全ては、紙のコスト、場所のコスト、製作のコストに起因しているからです。
紙代や保管場所のコストを最小限にして、且つ利用者に不便をかけない方法。
PDFができるまでは、それを解決する方法がなかったように思います。しかし、必要な時に必要な人がダウンロードできる共通サイトにPDFを保管しておくだけでこれらの問題が解消できるようになったのです。
「う~ん。何となくわかったけど、具体的にどのくらいの節約になるの?」
実は、私もこの疑問を持ちました。そこで、次のような具体的な計算をしてみることにしました。
注:以下は、あくまで私の独断で考えたお話です。使用される数値も確たる根拠に基づいたものではありません。例え同意頂けなくても、内容について保証することはできません。勿論、「この話によって損害を受けた!」なんて話を受け付ける気持ちは、これっぽっちもありません。どうぞご了解の上、お進み下さい。
今、ここに10の製品を販売する20人の会社(或いは部署)があります。製品は、ハードウェアだけでなくソフトウェアもあります。そして、これらには、インストールマニュアルや取扱い説明書の他、なぜか防災時の処置方法といった冊子まで、各製品に3冊のドキュメントが用意されています。つまり、合計30冊の冊子がこの会社にあります。5年前から製品が少しずつ増えてきて、今年で10の製品となりました。残念ながら今のところ新しい製品を世に出す計画はありません。多分これで充分に潤っているのでしょう。ひょっとするとシェアが90%を超えているのかもしれません。うらやましい限りです。
―――すみません。脱線してしまいました。―――
ここで、もしPDFがない場合には、どのくらい余分なコストがかかってしまうのか、ということを考えて見ましょう。
まず、冊子の印刷です。本来は製品に同梱する冊子のことも考えねばなりませんが、この会社は、これらをCD等に替える気はないようです。なので、これらに関する費用比較については考えないことにします。そこで、今回は販売後のサポート用にどのくらい余分なコストがかかるのかを中心に考えて見ます。
製品のサポートや営業の関係者用に5名分。カスタマーセンター用に2部。それと利用者から要求があった場合の再配布用に50部必要だと仮定します。カスタマーセンターには5名のオペレータがいますが、ドキュメントは2箇所ある移動デスクに保管し、共有することにします。合計で57部の印刷が必要となります。冊子は各々30ページありますので、
30冊×57部=1,710冊
1,710冊×30ページ=51,300ページ
の印刷をすることになり、印刷単価を@5円とすると、費用は以下のようになります。
51,300ページ×@5円=\256,500
これは初期費用ですね。改定を毎年10%程度すると仮定すると、年間の経費は以下になります。
\256,500×10%=\25,650/年
まあ、大した費用ではないですね。
次に保管代です。地域によって随分格差があるようですが、ここでは家賃が\5,000/㎡・月としておきます。ラックを使うと、大体100冊/㎡収納できそうですので、保管代は以下になります。
\5,000/㎡×1,710冊/100冊/㎡・月×12ヶ月=\1,026,000/年
これは結構な金額ですね。
この会社ではカスタマーセンターに5名のオペレータがいます。カスタマーセンターがPDFのあるなしに、どのくらい関係するのかは考え方次第ですが、もし、利用者にPDFを見られる場所を提供していない場合は、説明書に記載されている単純なことでも問合せがくることが予想されます。実は、問合せの大半が、もともと説明書に記載されている内容だと聞いたことがあります。説明書が公開されていてもこのような状況なのですから、説明書が手元に見当らなければ、この割合はもっと大きくなるでしょう。少なく見積もっても20%程度、つまりオペレータのうちの1名は、このことによる問合せだといえそうな気がします。
オペレータの時間給を\1,000/時間とすると、この1名の年間の費用は以下になります。
\1,000×7時間/日×1名×20日/月×12ヶ月=\1,680,000/年
つまり、PDFを用意せずに紙の冊子を前提とした場合、これに掛かる余分な費用は、
初期費用のプラス分が、\256,500、
年間費用のプラス分が、
\25,650/年+\1,026,000/年+\1,680,000/年=\2,731,650
となるわけです。
逆の言い方をすれば、PDF化によって\2,731,650/年の効果があると言えるのです。PDF化の作業は1冊10分もあれば変換して、サイトにアップできますから、
\1,000/時間×10/60分×30冊=\5,000
毎年更新するとしても、\5,000/年でできてしまいます。
やはり、PDFの威力はすごいです。
さて、この計算を見て、ふと思ったことがあります。
自分で計算しておいて無責任かもしれませんが、「ほんとかなぁ?」という気持ちです。何かが少し違う気がするのです。PDF化によって、確かに紙の量は減ったし、保管代も減ったことは計算結果が示す通りなのですが、一方で、そんなに効果があるのかな、という「ささやき」がどこかで聞こえます。それと、利用者の立場で考えた時に、とても便利になったという気がイマイチしないのです。
ひょっとすると、このコストダウンは供給者側の論理であり、利用者側にその皺寄せが来てないのかという点が気になっているのかもしれません。
という訳で、本当に便利になって、本当に期待通りのコストダウンができたのかを検証したいと思います。
利用者として操作に困ったので、この会社のサイトにアクセスしました。確かに説明書の類は全てアップされています。購入した製品の説明書も3冊ありました。
でも、今困っていることについてどの冊子に書かれているのか、ファイル名からだけではわかりません。そこで取り敢えず、取扱説明書をダウンロードすることにします。
30ページありました。ただ、縦方向に説明(画面)が流れているせいなのか、見づらいので、取り敢えず印刷することにしました(なんだか居酒屋で「取り敢えずビール」って言っている気持ちになってきました)。
「うん?」
「まてまて。確かに説明書をなくした僕が悪いんだけど、印刷費用は誰が持つんだ?」
「それと、ファイルが違っているかもしれないから、二度手間にならないように、ついでに他の冊子もダウンロードしておいた方がいいのかな。」
「うん?だったら電話して聞いた方が、安上がり?」
ということで、つながり難いけどカスタマーセンターに電話することにしました。
結局、節約したはずの紙代は利用者が替わりに負担しているか、そうでない場合は、カスタマーセンターの負荷は期待した程減らないかのどちらかのようですね。
供給側の関係者としても、実は同じような経験をしています。説明書を見る為に書棚に行くのが面倒ですし、調査も早く終えたいので、取り急ぎサイトからPDFをダウンロードします。関係者に後で知らせねばならないかもしれないし、何度も探すのがいやなので、該当するところを取り敢えず印刷しておきます。今度は会社のプリンターなので、紙代はあまり気にしません。
期待した程、紙は減ってないかもしれませんね。保管場所についても、印刷した書類は自分の机やかばんにしまうので、効果があるように見えているだけなのかもしれません。年末の掃除の時、印刷した不要なPDFの多さに気づいている方も多いと思います。
残念ながら、紙代も含め、効果として\2,731,650/年を100%認めるわけにはいかないようですね。
さて、カスタマーセンターでは、既に紙媒体の冊子の再配布を止めてしまったので、
「恐れ入りますが、弊社のサポートサイトからダウンロードしてご覧下さい」
という対応をするようになりました。
ちょっと待ってくださいな!
これは、明らかに供給側のエゴじゃあ、あ~りませんか!
決して「エコ」にはなってませんよ(苦笑)。
PDFでは読み難いという方からの問合せです。であれば、やはり冊子の予備を50冊とは言わないまでも25冊くらいはもっておくべきではないでしょうか。
そうなると、保管スペースの削減効果である\1,026,000/年は\513,000/年となります。
また、カスタマーセンターも、本来期待した効果の半分くらいになっているのではないでしょうか?従って、これも\1,680,000/年が\840,000/年となります。
即ち、本当の効果は、
初期費用分が、\256,500÷2=\128,250、
年間費用分が、\128,250/年+\513,000/年+\840,000/年=\1,481,250/年
となります。
これですっきりした気がします。
でも、PDF化の為のソフトウェアが3万円として、作業代が\5,000ですから、それでも\1,481,250/年の効果があるのです。PDFはすごいと言わざるを得ません。
ブック形式を提案した私ですが、やはりPDFを考えた人は私の数万倍すごい人だなと感心すること、しきりです。
PDFの削減効果を明確にすることができました。しかも、効果を100%にできない要因もわかってきました。もし、この要因を解決する手段があれば、より多くの削減効果を出すことができるかもしれません。何とかして、半減した効果を少しでも取り戻す方法を考えたいものです。
そこで、PDF化で期待した効果が100%だせない要因を、もう一度まとめてみましょう。
まず、PDFの表示形式は見づらいというのがありました。
縦方向に流れる方式は、横方向にページをめくる方式に比べると、人間には不得意だとよく言われます。ジェットコースターは、横より縦の動きを多用することで人間を不安にさせる効果を引き出します。映画やTVでも、縦方向に揺らした映像はとても見づらいですよね。
次に、求めている内容がダウンロードするまでわからないという点です。
本屋さんでも、パラパラとめくりながら何が書いてあるのかを把握して、購入(場合によっては買わずに帰る場合もあります)します。ビニールで閉じてあると、よほどでないと買おうと思いません(よほどの場合は買こともあります)。
3番目は、該当ページを人に知らせる時が不便というのがありました。このページを知らせたいのに、ファイルを丸ごと送らなければならないという問題です。
確かに、ダウンロードする前に内容がざっと読めるというのは大切です。これだけで、ひょっとすると、「PDFは面倒」という問題を解消できるかもしれません。携帯電話の操作がわからないときでも、たまたま手元に説明書がある場合には、パラパラとめくって直ぐに解決することがよくあります。これができると、再配布用や関係者用の書類の保管は、完全に不要となる可能性が高くなる気がします。
冒頭でお伝えした、ブック形式でこのお話を読んでおられる方。印刷したいという欲求は今でもありますか?
今まで、縦方向に表示されるブラウザに慣れてきた私たちは、何かと直ぐにコンテンツを印刷する癖がついているようです。でもブック形式だと、意外とその必要性を感じません。考えてみたら、買ってきた本や雑誌をコピーすることって、そんなにないですよね。
最後はファイルのダウンロードをせずに知らせたいページをそのまま伝えたい、という問題です。これができれば、利用者や関係者同士の情報の伝達もスムーズにできますし、カスタマーセンターの業務も、本来期待したとおりの効果が得られそうな気がします。
このことで、先ほど半減した
初期費用分、\256,500÷2=\128,250
年間費用分、\128,250/年+\513,000/年+\840,000/=\1,481,250
の復活です。
言い換えると、上記の3つのことが実現できるものがあれば、半減した148万円の効果を取り戻すことができそうです。そして、その方法がブック形式なのです。
「3番目の解決方法は聞いてないよ」
とおっしゃるあなた。是非RealReadかBook10のホームページをご覧になって、お気軽にお問合せ下さい(コマーシャルやっちゃいました)。
何より大きいのは、供給側のエゴがなくなり、利用者側の視点にたったサービスができるようになるということではないでしょうか。
更にもう一つ、お金に換算しづらいけれど、とても重要な問題があります。それはセキュリティという問題です。
みなさんは、一旦ダウンロードしたPDFFの文書を定期的に更新していますか?
そんな人は非常に少ないと思います。たいていの人は、
「そういうと以前ダウンロードしておいたな」
といった感じで、ファイルを再び開いてその内容を見ることでしょう。或いは、印刷しておいたものを机から取り出すのかもしれません。
でも、その内容に間違いがあったとしたら、どうでしょう?
もし、それが防災に関係することや、人体に影響する操作方法、或いは法律が変わって既にサポートされない手法を引用してしまったら、と考えるとぞっとします。
供給側が、常に新しい文書を更新していても、利用する側は常に新しい状態を見るとは限らないのです。
「その説明書は去年のものです。記述に間違いがあったので、昨月訂正しております」
と後でいわれても何の解決にもなりません。或いは、ダウンロードさせている供給側にも問題があると言われるかもしれません。
これらは金銭的な効果としては反映されませんが、メーカーだけでなく、説明書を提供する立場にあるものにとっては姿勢が問われる問題でもあるわけです。
長々とお付き合い頂き、本当にありがとうございました(中にはこの部分だけを呼んでいる方もいらっしゃるとは思いますが)。
「ブック形式はいいと思うんだけど、その効果がイマイチはっきりしないんだよね」
と、実はよく言われます。自分でも、その効果がすっきりと把握できていませんでした。
そんなこともあって、マニュアルの場合にどの程度の効果があるのか考えてみよう、と思ったのもきっかけの一つでした。
その前に、まずは偉大なPDFの効果を把握してみようと思ったのです。
PDFでは思ったとおり、或いはそれ以上に納得のいく効果を確認できました。しかし、一方では、本来印刷工程の簡素化という目的で開発されたツールを、文書公開用に流用した場合の無理な部分も明確になったと思っています。
誤解しないで頂きたいのは、今回の目的はPDFの欠点を明確することでは決してありません。本心からPDFはすばらしいと思っています。ただ、不得意なところを、金銭的な効果も明確にした上で補う手段があれば、更に便利にエコなツールとして利用できると思っているのです。
RealReadという技術は、PDFの3つの欠点を補うことができます。また費用もこの効果の10分の1以下で実現できます(2回目のCMです)。PDFほどの効果はないかもしれません。しかし、利用者側の目線でドキュメントを提供でき、且つ経済的な効果も充分あると思っています。
もしお時間があれば、これを機会にRealReadか若しくはBook10のサイトをご覧頂ければと思います(3回目のCMです)。
2008年7月吉日
北村善治
©コムネックス 2008
